国連開発計画(UNDP)は2013 年から、日本政府と協働して、結核(TB)、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)という、貧困層が不当に影響を受けている病気から命を守る医療技術(ワクチン、医薬品、診断ツール)に対する人々のアクセスを改善するための政策や機関、システム、能力の強化に努めてきました。
UNDP が主導する「新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)」の戦略的アプローチは、2 つの教訓を参考に策定されています。第一に、革新的な医療技術が開発されても、その導入と利用は、各国の医療システムにおいてその国特有のボトルネックや課題によって制約を受けることが多いという現状があります。ADP は、こうした課題に対処するうえで妥当な人的、技術的、制度的能力の特定と強化に重点を置いています。第二に、新規医療技術の導入と提供を成功させるためには、国内制度の協調と一貫性も欠かせません。そのため、ADP は持続可能なマルチセクター型のアプローチに向けた変革を各国が自ら推進できる政策やシステムの強化を支援しています。能力の強化に協調的なマルチセクター型のアプローチが加われば、医療に対するアクセスの持続的改善が可能になり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)やパンデミック対策、さらには人間の安全保障の実現に向けた前進も速まることでしょう。
ADP のコアパートナーであるUNDP、世界保健機関(WHO)、熱帯病医学特別研究訓練プログラム(TDR)およびNGO のPATH は、国、地域や世界の関係者と連携しながら、成果を上げてきました。
この報告書では、ADP が人々の暮らしに与えた影響にスポットライトをあてた一連のストーリーを紹介しています。これらのストーリーは、UNDP と日本政府によるパートナーシップが、各国の医療システムのレジリエンスを高め、人間の安全保障達成に向けた重要な手段としてUHC を優先するという、「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」、UNDP 戦略計画2022-2025 および日本が新たに策定したグローバルヘルス戦略にも反映されている共通の目標に向かって協力を続けてきたことの重要性を裏付けています。
4 つのADP パートナーはそれぞれ、独自の専門能力を持ち寄り、革新的かつ統合的な方法で低・中所得国(LMICs)
における能力のギャップを特定し強化を支援しています。