保健、環境、安全保障など、世界が相互に関連する複数の危機に直面する中で、国際社会全体が「誰一人置き去りにしない」というグローバル・コミットメントがこれまで以上に重要となっています。
COVID-19 のパンデミックの教訓は、ますます明確な形で現れています。複数の新型コロナ・ワクチンの研究開発が記録的ペースで進んだものの、それに伴い、すべての国でその迅速かつ公平なアクセスを可能にする体制や枠組みが整備されることはありませんでした。この理解は、COVID-19 対策の改善と、将来的なパンデミックの予防を図るうえで欠かせません。
GHIT Fund とUNDP が主導するADP との継続的パートナーシップは、これに対応できる立場にあります。このパートナーシップは以前から、研究開発と製品開発の加速を現地の能力支援に結び付け、必要とする人々にアクセスと提供を確保することを戦略的なねらいとしてきたからです。ADP がいずれも重視している各国医療システムの制度的・技術的能力の強化と、COVID-19 やその他疾病の流行とパンデミックへの各国の対応支援は実際のところ、表裏一体の関係にあります。どちらもUHC の達成と、人間の安全保障の前進に向けて、安価で品質を保証された医療技術へのアクセスとその提供を推進することになるからです。
どのような状況下であっても国民に不可欠なサービスを提供できるよう、各国の医療システムの能力を整備することは、死活的に重要です。また、適切に機能する医療システムは、依然としてUHC に向けた前進を示す最大の指標であり、不平等をなくすために欠かせない手段です。端的に言えば、ADP の活動などを通じて、医療システム全体のレジリエンス強化のために現在講じられている措置は、持続可能な人間開発に大きく貢献します。これは「UNDP 戦略計画2022-2025」と「UNDP HIV 保健戦略2022-2025」とも整合しています。この2 つの戦略はともに、健康、持続可能な開発、人間の安全保障という相互補強的目標を達成するための基盤として、強靭で持続可能な医療システムを構築する必要性を認識しているからです。
COVID-19 のパンデミックによる永続的な影響には、引き続き高い関心が集まるものと見られます。コロナ禍は医療システムに多大なストレスを与えることで、必須の保健機能を果たす能力を高める根本的必要性があることを改めて明らかにしました。
ADP が新規医療技術へのアクセスとその提供を確保するための医療システム強化に重点をおいていることは、今日、これまでにも増して重要になっています。今後のADP の戦略的焦点を支えるものは次のとおりです。
「私たちはCOVID-19 のパンデミックから得た重要な教訓を無視してはなりません。つまり、新規医療技術にアクセスし、これを提供する能力を強化することは、コロナ禍対策から必須医療サービスの維持に至るまで、公衆衛生上の優先課題への効果的で持続可能な対応を進める上で、研究開発や製品開発の前進と同じくらい重要だということです。日本政府が相互関連性のある補完的プロジェクトとして、GHIT Fund とADP の両方を支援している理由も、ここにあります。
研究開発と医療システムの強化に並行して投資することにより、現場へのインパクトが確実に高まるからです」
「新たな段階を迎えたGHIT Fund とADP のパートナーシップが、10 年間の結果と成果を土台としつつ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと人間の安全保障の達成というゴールを目指し、医療技術のイノベーション、アクセスおよび提供の統合を図るという戦略をさらに充実させてゆくことを期待しています」