新規医療技術のアクセスと提供に関する
パートナーシップ- アフリカにおける挑戦

医療イノベーションを、最も必要とされる場所へ、
より早く、より広く

新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)は、10年以上にわたり、アフリカの国々やコミュニティと協力し、科学とイノベーションの可能性を引き出し、命を救う医療技術を最も必要としている人々に届けてきました。

結核、マラリア、そして顧みられない熱帯病(NTDs)は、サハラ以南のアフリカ全域において、人々の健康と福祉を今なお深刻に脅かしています。新しい医薬品、ワクチン、診断技術の開発は進んでいますが、それらが最も必要とされる人々のもとに届かない状況が多く見られます。

この課題に対応するため、ADP はアフリカ連合開発庁をはじめ、主要な地域機関や広域地域パートナーと連携し、アフリカ各国と共に解決策の構築に取り組んでいます。

国連開発計画(UNDP)が主導するADPは、日本政府からの資金援助を受け、世界保健機関(WHO)、熱帯病研究・訓練特別プログラム(TDR)、PATHとのパートナーシップのもと運営されています。

2013年以降、UNDPと日本政府は、相互に関連する2つのイニシアチブを通じて、結核、マラリア、NTDsとの闘いにおいて戦略的なパートナーシップを築いてきました。グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、新薬、ワクチン、診断技術の開発に向けた技術革新と研究を推進しており、ADPは、それらの新しい医療技術へのアクセスと提供を可能にするための能力、制度、政策の強化を行っています。

この革新的なパートナーシップにより、ADPは、政策や規制の枠組みから、人材や組織の能力開発、サプライチェーン、そしてラストマイル・デリバリーに至るまで、医療技術へのアクセスと提供に関するバリューチェーン全体をつなぐ役割を果たしています。

ハイライト

就学前児童に対する住血吸虫症の新たな治療選択肢(アラプラジカンテル) 就学前児童に対する住血吸虫症の新たな治療選択肢(アラプラジカンテル)

新しい治療選択肢は、パイロット6か国で展開されており、感染のリスクのある就学前児童500万人以上に恩恵をもたらす可能性があります。現在、アフリカ全体へのスケールアップに向けた基盤が築かれています。

薬剤耐性結核の治療 薬剤耐性結核の治療

西・中央アフリカ24か国において、薬剤耐性結核治療を安全かつ効率的に展開するための能力向上が図られました。その結果、2018年以降、対象患者の治療率は2倍に増加しています。

マラリアワクチン マラリアワクチン

13か国で進められているマラリアワクチンの投与と季節性マラリア化学予防の統合的な提供に貢献しています。この取り組みにより、リスクのある就学前児童5,400万人に対して、5年間で92%の予防効果を達成できる可能性があります。

規制の調和 規制の調和

各国の規制当局の能力を強化し、地域レベルでの調和を図ることで、平均2年を要していた医療技術の承認期間がわずか7か月に短縮されました。これにより、何百万人もの人々が、品質が保証された医療技術をより早く利用できるようになりました。

保健システムの強化 保健システムの強化

アフリカ47か国において、統合的なアプローチと南南協力による学びを活かしながら、新しい医療技術へのアクセスを改善するために、保健システムの強化を進めています。

変化を推進し、命を救う

story header
子どもたちが取り残されないように:アフリカにおける住血吸虫症
対策の新たな時代
続きを読む
story header
次世代をマラリアから
守るために
続きを読む
story header
西・中央アフリカにおける
薬剤耐性結核治療の変革
続きを読む
story header
規制調和の促進
続きを読む

子どもたちが取り残されないように:アフリカにおける住血吸虫症
対策の新たな時代

Charles Boniface
「私たちのコミュニティは漁業に依存していますが、この病気は水を介して広がり、私たちの生産性を妨げています。私たちは多くの命を住血吸虫症で失ってきました。就学前児童向けの新たな治療選択肢が利用できれば、大きな安心感が得られるでしょう。」
— タンザニア、センゲレマ県ブヤグ村に住む幼い子の父親、チャールズ・ボニフェイスさん
Charles Boniface

WHOのNTDロードマップ(2021-2030年)は、緊急の対策の必要性を認識し、2030年までに20のNTDsを予防、制御、排除、または根絶するというビジョンを示しています。住血吸虫症はNTDsの中でも最も深刻な感染症の一つであり、不可逆的な臓器障害、慢性的な栄養失調、認知発達障害を引き起こし、幼少期から健康状態の悪化と貧困の悪循環を定着させます。

サハラ以南のアフリカでは、5,000万人以上の就学前児童(2歳-5歳)が感染のリスクにさらされています。しかし、この年齢層の子どもたちは、年齢に適した治療薬がなかったため、これまで十分な治療を受けてきませんでした。 

ADPとGHIT Fundの革新的なパートナーシップは、包括的なエンド・ツー・エンド・アプローチを通じてこの不平等に対処し、就学前児童に対する住血吸虫症の新たな治療オプションであるアラプラジカンテルの開発と導入を支援してきました。

ADPは、特にガーナ、セネガル、タンザニアといった6カ国[1]におけるパイロット展開の準備に貢献しています。これらの国々では、各国の保健機関と協力し、ベースライン疾患マッピングの作成、コミュニティの参加促進、国レベルの協議への協力、そして必要な規制および政策の承認を推進しています。現地の研究機関や大学と連携したパイロット研究では、様々な提供モデルの実現可能性や費用対効果を評価し、スケールアップに役立つエビデンスを構築しています。

image
image
[写真キャプション] 2025年1月、タンザニアのイティリマ、センゲレマ、キゴマの各県で、1,000人以上の就学前児童がタンザニア国立医学研究所が主導する寄生虫学的ベースライン調査に参加しました。疾患の蔓延率と重症度を正確に測定することは、治療ニーズの特定とアラプラジカンテルの導入計画策定に不可欠です。続きを読む
image
image
[写真キャプション] タンザニアでは、NTDsプログラムのコーディネーターとコミュニティ住民がAIを活用したカタツムリ識別アプリを試験的に導入しました。このデジタル・ツールから得られた知見は、住血吸虫症対策における地域に適応した監視戦略の策定に貢献しています。

またADPは、アラプラジカンテルの効果を最大限に引き出すため、女性生殖器住血吸虫症ケアをより広範な保健プログラムに統合しています。加えて、ポイント・オブ・ケア診断ツールとして超音波検査の試験導入を進めるとともに、AIを活用したカタツムリ識別アプリの開発を通じて、住血吸虫症の診断精度とリスク管理の向上を図っています。

これらのアクセス基盤を強化することで、対象流行国6カ国における500万人以上の就学前児童の認知発達、教育達成度、そして将来の経済的可能性を守る道筋が開かれました。さらに重要なのは、これらの試験的導入から得られたエビデンスが、アフリカ大陸全土におけるアラプラジカンテルの導入と普及を加速するための青写真となることです。

次世代をマラリアから
守るために

マラリアは、サハラ以南のアフリカにおいて依然として主要な死因のひとつであり、毎年50万人以上の命を奪っています。2023年だけでも、5歳未満の乳幼児43万人がマラリアにより命を落としたと推定されています。各国が2030年までにマラリア撲滅を目指す中で、革新的な治療薬へのアクセスを加速させるためには、保健システムの強化が不可欠です。

WHOが推奨するマラリアワクチン(RTS,SおよびR21)の登場は、何百万人もの子どもたちを守るための待望の一歩であり、アフリカにおけるマラリア対策に重要な転換をもたらします。

ADPは、これらの新しいワクチンの安全かつ効果的な導入と普及に大きく貢献してきました。その取り組みには、8カ国[2]におけるRTS,Sワクチンの共同規制審査と迅速な承認の促進、安全性監視およびリスク管理計画に関する保健機関の能力強化への支援などが含まれます。

またADPは13か国において、マラリアワクチンと季節性マラリア化学予防プログラムを統合した、最適なワクチン供給モデルの開発に貢献しました。[3] このハイブリッド戦略は、ワクチンまたは季節性マラリア化学予防のどちらか一方のみを実施した場合の予防効果(約60%)を大きく上回り、最大で92%の予防効果を5年間にわたってもたらす可能性があります。

image

さらには、新しいマラリアワクチンの安全な導入を支援するため、ADPは、予防接種後の有害事象のモニタリングを強化するためのモバイル・アプリ(MedSafetyおよびVigiMobile)の試験と展開を促進しました。ガーナ、タンザニア、ブルキナファソ、マラウイ現地の研究機関や大学と協力し、有害事象の自己モニタリングと報告を強化するこれらのアプリの導入に取り組み、ワクチン安全性監視システム全体を強化しました。

これらの取り組みを通じて、ADPは各国と連携し、マラリアワクチンの計画から実施までを支援することで、効果的で安全、かつ公平な導入を実現しています。得られたエビデンスは、現在季節性マラリア化学予防を受けている5,400万人の就学前児童に対する、将来的なワクチン接種プログラムの拡大に役立ち、数百万人のマラリア感染および死亡を未然に防ぐ可能性を秘めています。

image
image
image

西・中央アフリカにおける
薬剤耐性結核治療の変革

サハラ以南のアフリカでは、結核が依然として深刻な公衆衛生上の課題となっています。2023年には、推定260万人が結核に罹患し、42万人以上が死亡したと見込まれています。この地域では、毎年約6万2,000人の薬剤耐性結核患者が新たに発生していると推定されており、その半数以上が診断や治療を受けられていない状況にあります。その結果、致死性の高い結核が地域社会内で抑制されないまま感染を拡大させています。

こうした状況の中、ADPは各国と連携し、より安全で短期間の結核治療レジメンの導入を支援するとともに、治療へのアクセス、服薬遵守(アドヒアランス)、および治療効果の向上につながるデジタル・ソリューションの推進に取り組んでいます。

近年、ADPは西・中央アフリカ結核対策地域ネットワーク(West and Central African Regional Networks for TB Control)と連携し、24か国からなるネットワーク[4]を構築しました。このネットワークを通じて、南南協力による知識交換を促進し、各国での国家ガイドラインの導入を支援するとともに、より安全で効率的、かつ各国の状況に応じた薬剤耐性結核治療の展開に向けて、制度的な能力強化を進めています。ADPの支援は、2018年以降、これらの国々における薬剤耐性結核治療の普及率を2倍に引き上げることに貢献してきました。

またセネガルとブルキナファソでは、ADPはモバイル・アプリ(ビデオ監視療法および99DOTS)の導入に貢献しました。これらのアプリにより、患者は遠隔で治療状況をモニタリングできるようになり、結核治療へのアクセスが容易になりました。このアプローチは、サハラ以南アフリカにおける結核罹患世帯の半数以上が直面している経済的負担を軽減する可能性を秘めています。また、患者の服薬遵守率の向上を支援することで、薬剤耐性の発生や結核の感染拡大を防ぐとともに、医療サービスへの負担軽減にも貢献しています。

image

規制調和の促進

ADPは、各国規制当局の限られた人的・財政的資源に対する負担を軽減しつつ、新しい医療技術の市場投入を促進する効果的な手段として、国を超えた地域的な規制調和に向けた取り組みを一貫して推進してきました。アフリカ連合開発庁との長年にわたる協力関係を通じて、ADPはアフリカ医薬品規制調和イニシアティブの強化に貢献し、より効率的で一貫した効果的な規制の枠組みを構築するため、アフリカ諸国の政府間協力を促進してきました。

ADPは、医療品規制に関するアフリカ連合医薬品規制モデル法の起草および各国での採択に尽力してきました。このモデル法は、加盟国が規制制度の能力を強化し、国内法の整合性を高め、国境を越えた規制の調和を促進するための包括的な枠組みを提供しています。またADPは、アフリカ医療機器フォーラム、アフリカワクチン規制フォーラム、南部アフリカ開発共同体と連携し、共同規制評価の実施に向けた地域および準地域のプラットフォームを強化し、新薬およびワクチンの迅速な承認を実現しています。

これらの取り組みにより、新規医療技術の承認取得までの期間は、平均2年から中央値わずか7か月へと大幅に短縮されました。その結果、何百万人もの人々が、品質が保証された医療技術をより早く利用できるようになりました。また、アフリカ医薬品庁の基盤も強化され、規制基準の調和が進むとともに、医療技術に関する単一かつ予測可能なアフリカ市場の確立に向けた進展が加速しています。

今後の展望

ここで紹介した成果は、革新的なパートナーシップと戦略的な投資の力によって実現されたものです。しかし、これらの成果は、気候変動、経済の不安定化、地政学的な緊張など、グローバルヘルスを取り巻く複雑な課題の中にあります。こうした危機は、アフリカの発展を脅かすだけでなく、すでに逼迫している保健システムにさらなる負担をもたらしています。このような状況は、結核、マラリア、NTDsへの対応、そして将来のパンデミックへの備えを可能にする、強靭で持続可能な保健システムの構築が急務であることを改めて浮き彫りにしています。また、アフリカにおける多様な保健機関やイノベーションの可能性を最大限に活かすことの重要性も明らかにしています。

新たな医療技術は、保健分野における変革の強力な推進力となり得ます。その可能性を最大限に引き出すため、ADPはGHIT Fund、日本政府、そしてアフリカ各国の機関やパートナーとの連携をさらに深めていきます。UNDPが主導するADPとそのパートナーは、医療技術のイノベーション、アクセス、提供にまたがる体系的な障壁に取り組む、包括的なエンド・ツー・エンドのアプローチを継続的に展開しています。この取り組みには、国家規制の整備、サプライチェーンの強化、そしてデジタル技術やAIの活用を通じて、アフリカ諸国や地域社会が医療技術をより効果的に人びとへ届けるための支援が含まれます。

ADPは今後も、各国が結核、マラリア、NTDsへの対応を強化し、UHCの実現に向けた歩みを加速できるよう協力を続けていきます。そして、すべての人々にとって、より健康で安全、そして強靭な未来の構築に貢献していきます。

image

Stay connected

Subscribe to our mailing list